(まったく、ばかだばかだとは思ってたけど…!)

 は全速力でウマを走らせながら、舌打ちした。
 よもやここまでばかだとは。
 残された伝言。追ってくるなというカルラ。いやな予感がする、なんて、あいかわらず直感の鋭い少女だ。だからこそここまで生き残れたのだろうが、今回ばかりはそうはいかない。予感がするならなぜ自分を連れて行かなかったのか。いつもいつも、厄介ごとに巻き込んでくれるくせに。

(アルノートゥン…あの場所になにがあるか、カルラもジラークもわかっているのか…!?)

 長い研究のあいだに見つけたもの。アルノートゥンには秘されるべきことがある。けっして暴いてはいけないものが。
 それが戦争のにおいで、目覚めてしまうかもしれない。
 は研究のためならどんな危険も顧みないが、だからこそ命は大事にする。あれと相対するなどもってのほかだ。
 けれど。

(カルラ…!)

 青い少女を想う。
 苦痛にまみれた過去を振り払うため、強くなろうとしたばかな子ども。そんなことでしあわせになんかなれるわけがないのに。
 そんな愚か者を、はそれなりに気に入っていた。
 長年の夢だったアカデミーからの誘いを断り、こうして死地に赴く程度には。

(待ってろ、カルラ。あんたは絶対に、死なせない!)


の守り手

Act.06  漆黒に落ちる


「カルラ!」
!? なんで…!」

 洞窟の最奥に飛び込んだ瞬間、見えた青い鎧の背中に叫んだ。その足元には、ジラークが倒れている。傷だらけのカルラの身体に舌打ちして、その細腕を掴んだ。

「話はあと。とにかく脱出しよう」
「その慌て様。あたしの予想は正しいみたいだね」
「わかってたんならなんで入ったの!!」
「だってジラークがいるんじゃしょうがないじゃない」

 軽く言ってのけるカルラに、はさらに文句を言おうとして、やめた。

「わかってるんなら説明はいいね。早く出よう」

 カルラを引っ張り出口へときびすを返した―――その瞬間。
 突然地響きが起き、たちは体勢を崩した。

「うわ、これって…!?」
「! カルラっ!」

 カルラを抱いて後方へ飛ぶ。落ちてきた岩が、ちょうどふたりがいた場所に落下する。は舌打ちした。退路がない。
 そのとき―――唐突に、浮遊感。見ると、ふたりの足元がひび割れ、崩れ落ちていた。

「げっ」「くっそ…!」

 はとっさにカルラを引き寄せ、その身体を腕にかばった。カルラが目を見開くが、はそれどころではない。
 視界に映った洞窟の底は、どこまでも深く、遠い。このまま落下すれば命はない。そう判断したは、詠唱を始めた。

(間に合え…!)

 唄うような声が、カルラの耳元で聞こえた。



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up data 07/12/22
原作でのこのイベント好きなんです。