いとしき貴女へ 「痴漢というかセクハラ?」



「もー、いきなり抱きつかないでよ!」
「いやいや、ごめんごめん。それにしてもさん、ちょっと悲鳴のあげ方考えたほうがいいよ?」
「余計なお世話!」

 あー、もう恥ずかしいなぁ。
 私は前髪をぐしゃ、と掻きあげて、ため息をついた。
 これからは気をつけよう。
 っていうか、さすがに「ぎゃあっ」はないよね、ほんとに。
 可愛げなくても「うわぁ」くらいにしといたほうがいいよね。うん。

「でも、聖さんももうちょっと控えないと、いつか痴漢で逮捕されるよ」
「大丈夫だよ。選んでやってるから。反応面白いひと限定」
「じゃあ私が訴えてやる」
「すみませんでした」

 深々と頭を下げてくる聖さん。
 まあ許してやるか。ぜったい口先だけだけど。
 聖さんは「ちぇー」と拗ねたように唇を突き出すと、小さく呟いた。
「この様子じゃ無理かなぁ…」
「? なにが?」

 首をかしげると、聖さんは口元をにやりと歪めて、私に訊ねてくる。
「ねね、私になにか、渡すものない?」
 期待に輝く聖さんの顔を、半眼で見つめた。


ある
ない



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up data 05/2/13