いとしき貴女へ 「呼び止めた」



「? なに、さん?」
 きょとんとして蓉子さんが振り返る。
 私は急いで、持っていたかばんを開いた。

 うん、ある。そりゃあるよね。入れたの私だもん。
 いざ渡すとなると、ちょっと緊張する。
 やっぱりみんなそうなのかな。

 私は図らずとも高まっている鼓動を聞きながら、入っていた箱を手に取った。
 こっちに戻ってきた蓉子さんに、それを差し出す。
 きれいにラッピングされたそれは、どこからどう見ても、本命チョコだった。
 まあ本命だしね。
 蓉子さんは一瞬動きを止め、戸惑ったような表情で私を見上げた。

「えっと…これは?」
「あ、うん、あのね、」
 私はひとつ深呼吸して、言った。


「私から」
「友だちに預かったの」



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up data 05/2/13