いとしき貴女へ 「呼び止めた」 「? なに、さん?」 きょとんとして蓉子さんが振り返る。 私は急いで、持っていたかばんを開いた。 うん、ある。そりゃあるよね。入れたの私だもん。 いざ渡すとなると、ちょっと緊張する。 やっぱりみんなそうなのかな。 私は図らずとも高まっている鼓動を聞きながら、入っていた箱を手に取った。 こっちに戻ってきた蓉子さんに、それを差し出す。 きれいにラッピングされたそれは、どこからどう見ても、本命チョコだった。 まあ本命だしね。 蓉子さんは一瞬動きを止め、戸惑ったような表情で私を見上げた。 「えっと…これは?」 「あ、うん、あのね、」 私はひとつ深呼吸して、言った。 「私から」 「友だちに預かったの」 |