いとしき貴女へ 「急ぐので通り過ぎる」 職員室を出て、私は思い切り背を伸ばした。 用事も済んだことだし、これからどうしよう。 私は廊下を歩きながら、虚空を見やった。 なんだか今日いちにち、何事もなく終わってしまったけど、それっていいんだろうか。 高校最後のバレンタインデー(前日だから、バレンタインイブ?)を、平穏無事に過ごすというのも、なんだかなぁ、だ。 ―――なんて、自分の青春の過ごし方を、本気で考え直していた私の背後に、妙な気配が現れた。 「さん!」 「ぎゃあっ!?」 がばぁっ、と覆いかぶさってきたそれに、私は意味不明な声を上げてしまった。 だ、だれ!? …いや、こんなことする人って、一人しかいないね。 「ちょっと聖さん!」 肩越しに振り返り、私は思い切り彼女を睨みつけた。 つぎへ |