キズだらけのひかり 火の爆ぜる音が暗闇をはじく。魔物の気配に注意しながら、ティアは星空を見上げていた。 ふと、背後からしぼり出すような声が聞こえた。振り返ると、朱色の髪の少年が顔を歪めている。寄せられた眉間のしわがやるせないのは、彼があまりにやさしいことを知っているから。 今でもうなされているんだ、といつか彼の親友が言っていた。そのとき浮かべた微笑には、あの子どもへの愛おしさと慈しみに満ちていた。 何度か、眠っている彼の手を握って「大丈夫です」とささやく導師のすがたを見たことがある。おなじように、彼をなぐさめるためにすり寄る忠実なチーグルも。 (ねえ、ルーク) 声に出さずに語りかけて、ずれた毛布をかけなおしてやる。 あなたは愛されているのよ。―――あの日失ったものを、壊してしまったなにかを、必死で手繰り寄せて、かき集めて、不器用な手で直そうとする彼を知っている。 その手が破片で傷つこうとかまわずに、がむしゃらに立ち向かうすがたに、ティアのこころも次第に揺れはじめていた。 ティアは、無意識に彼の頬に触れていた自分の手に気づき、目元に朱を走らせて身体を引いた。 いつのまにか、少年の寝顔はおだやかなものに変わっている。 そのことに安堵し、目を伏せる。 あと何度傷つくのだろう。この、繊細でやさしい手は。 不器用な指先が必死で作り上げるそれは、いびつでもとてもうつくしい光りを放ちはじめている。 それが完成されるとき、この子どもがどれだけの傷を重ねているのか。それを考えると、ティアは言葉にできないものに胸を締めつけられた。 それなのに。 (変よね、ルーク) ティアは一瞬、口元に微笑を乗せると、ルークから顔を背けた。 (あなたが傷つくたび、私はあなたに魅せられる) そのきらめきに、目がくらむ。 |