ふるえる子どもにほかになにが言えただろう。 最初のころはそんなことまったく意識なんてしてなくて、知っていても知らなくて、ただ知ったつもりになっていただけだった。 時間が経つにつれ、次第に気づきはじめた。理解してしまった。彼は子どもだ。7年しか生きていない、子ども、なのだ。 そのちいさな両肩に、頼りない背中に、私たちはなにを押しつけたのか。考えてぞっとした。幾千幾万の命。つぐなえるはずのない大罪。混乱していたなんて言い訳にもならないほどに、重い、重い荷物を背負わせて、私は。 「ルーク、」 くちびるからこぼれる名前は、いつからか熱を含むようになっていた。 「ルーク、」 その目が、声が、私を認めるたび身体は温度を上げて。 「ルーク、大丈夫、大丈夫よ」 翠の瞳に薄く水の膜が張る。それでもけしてこぼすまいと堪えるくちびるが、せつなくて愛おしく、私の心臓がぎゅっと締めつけられる。 「大丈夫、あなたは消えない。あなたはずっとここにいるわ」 握りしめた両手は長いあいだの戦いでささくれていて、とても7才の子どもの手とは思えなくて、それがなおさら私の涙を誘う。(けれど泣いてはいけない)(涙なんて流したら、それが証明になってしまう)(私の、嘘の) 「あなたは消えない」 そして私たちは笑い合うのだ。最後の戦いを終えて、自由になった世界で、みんないっしょに。そう、みんないっしょに。 ガイはよくやったなルーク、と言ってこの少年の肩をたたくだろう。アニスはルークに抱きつくかもしれない。ナタリアは口元に手を当てて笑う。ミュウはぴょんぴょん飛び跳ねてよろこびを全身であらわして、大佐はきっといつもどおりの笑顔でその光景を見つめている。そして私は、 「ティア」 子どもの声に顔をあげると、さっきまで泣きそうだった顔が、透きとおるような笑顔を映していた。 「ありがとう。もう、大丈夫だよ」 とてもやさしい笑顔。青空のように澄み切っていて、それなのにひどくさみしい。なにが、大丈夫なのか。 一瞬前まで想像していたすべてが打ち砕かれて、私はただ彼の目を見つめることしかできなかった。 さっき私が紡いだ言葉のなかの、どれだけが真実だっただろう。どれだけが確証あるものだっただろう。 それでも私は繰り返すしかなかった。 |