わたし、にはひとつ、とてもとても大事な夢がある。 しかしながらそれはかなり難易度が高く、正直叶うとは思っていなかった。 ―――が。 やはり日ごろの行いがものを言うのか。絶好のチャンスが到来したのだ。 神さまありがとう。信じてないけど。 あとでエリカに代わりに祈っておいてもらおう。 と、いうわけで。 「わたしに泥棒を教えてください」 「………はあ?」 ロベリアさんが思い切り怪訝な顔をした。 あれ、やっぱだめかな? 起き抜けなら寝ぼけててきっとまともな判断がくだせないからうっかり頷いてくれちゃったりしちゃわないかな、って感じでロベリアさんが起きる夕方ごろを狙っていきなり私室訪問してみたんだけどだめですか?」 「おまえ脳内がだだ漏れだぞ」 「あら」 「あら、じゃねぇ」 それとなんだその作戦ともいえない作戦は。 ロベリアさんにデコピンを喰らった。痛い。でもあとでエビヤン警部に自慢しておこう。きっとハンカチ噛んでくやしがるぞぅ」 「だから思考を声に出すなっつうの。っつーかキモチワルイ想像するな」 ハンカチ噛むエビヤンなんぞだれが見たいか。 失礼ですよロベリアさん。キモかわいいっていうのが最近の流行りなんですから。 きもいのは認めるがかわいくはない、断言できる。ってかおまえも失礼じゃねぇかよ。 この間デコピン3発。計4発のデコピンを喰らったわたしの額はたぶん真っ赤。 ちょっと乙女にたいして容赦なさすぎじゃないですか、と言ったら鼻で笑われた。なにさ。 「で、なんでいきなり泥棒なんだよ?」 「わたしの夢だったんです、泥棒!」 「そうか。ガンバレ。おやすみ」 「ちょっ、寝ないでくださいよ起きたばかりじゃないですか寝すぎると脳みそ溶けてカニミソになっちゃいますよ!」 「なるか! っつうかおまえな、わかりきったことだからあえて言わなかったけど、バカだろ。頭腐ってるっていうか腐るもんもねぇくらいからっぽだろ」 「なにを言うんですか! 頭がからっぽだったらバランス取れなくて転んじゃうじゃないですか!」 「そういうところがバカだってんだよ!」 わたしがロベリアさんの腕を掴んで引っ張って、ロベリアさんは振り払おうと腕を振る。 だけどわたしも夢のためにここは引くわけにはいかない。 まさしくスッポンのごとく喰らいついて放さない気概で挑むと、いい加減飽きたのか疲れたのか、おそらく両方のロベリアさんが、心底嫌そうな顔で舌打ちして会話をつづけてくれた。 「で? なんでそんなに泥棒になりたいんだよ?」 「ちょっと言ってみたいセリフがあるんですよね」 「……」 「あ、なんですかそのあからさまにいやな予感がする≠チて顔は」 「…おまえとエリカのちがいは、エリカはまるきり天然で、おまえはある程度わかっててやってるってところだよな」 「わ、ありがとうございます」 「褒めてねぇ」 「それでわたしの言ってみたいセリフというのはですね、」 「訊いてもいねぇよ」
殴られて追い出されました。
…わたしはあきらめない! (なんでここはこんなのばっかりなんだ) |