おもしろいぐらいに動揺した顔にふしぎそうなまばたきを繰り返せば、あなたはなにも言えずに押し黙る。 その反応が楽しくてつい無自覚なふりをしているけれど、ほんとうはわかっているのよ。あなたがわたしにどんな感情を向けていて、わたしがそれにどんな想いを返しているのか。 でも言葉にしないから、あなたはなにも言えないのでしょう。わたしが自覚するのを待っているの、知っている。だけどこの距離が心地いいから、わたしはまだ言ってあげない。 その代わり無自覚なふりした好意だけあげるから、今はそれでがまんしていて。 「…」 「うん? どうしたの、蓉子ちゃん」 「おねがいだから、もうこういうことはやめて」 「どうして? 好きな友だちにはこうするものでしょ?」 「…ふつう、友だちでも頬にキスなんてしないわよ」 「うーん…そういえばそうね。わたしも蓉子ちゃんにしかしないね。なんでだろ」 「………」 困りきって赤面したあなたを見てわたしが楽しんでいるなんて、あなたはきっと考えもつかないのでしょう。 ほんとうに天然なんだから、とつぶやくあなたのほうこそ純粋なのよ。
知らないでしょう、わたしがどれだけしあわせなのか。
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