留守電 正解者にはご褒美が…?



『もしもし、鳥居です』
 意外な人物に、私は驚いた。
『ねえ、。私、今日気づいたことがあるの。教えてあげようかどうしようか、今考えているところなんだけど』
 私は首を傾げた。
 私に教えてあげる、ってことは、私に関係することだろう。
 でも、何を?
『でも、教えてもいいけど、このまましばらく黙っている、っていうのも面白そうじゃない?』
 いや、訊かれても。

 江利子は実に楽しげに、くすくすと笑っていた。
 ひとしきり笑い終えると、ふと気づいたように言った。
『ああ、だけど、もしも教えずにいて、誰かに奪われても困るわね』
 奪うって、なにを。
 彼女が突飛なのはいつものことだけど、今日は一段と変だ。
『それに、今日、聖とじゃれ合っていたし』
 いきなり出てきた友人の名に、私はますます頭を捻った。
『たとえ誰でも許せないけど、聖に獲られるのがいちばん癪ね』
 理解が追いつかず、江利子はどんどん先に進んでしまう。
 まあ、留守電だから仕方ないけど。

、私が気づいたこと、教えてほしい?』
 うん、教えて。私の心の声を聞いたかのように、江利子は笑った。
 学校で会っていたときは、こんなに上機嫌じゃなかったのに、本当にどうしたんだろう?
『じゃあ、これからヒントをあげるから、自分で考えてみて』
 おいおい、いきなりクイズか。
 私は江利子の唐突さに呆れながら、でも内心わくわくしている自分に気づいた。人のこと言えないな、私も。

『ヒント。今日のあなたのラッキーカラー=x

 ……はい?
『わかる?』
 わかるか!
 私は頭を抱えた。
 えーと、確かに私、占い好きだけど、なんなの?
 ラッキーカラーって…黄色? なにか意味あるの?
 っていうか、教えてないよね、ラッキーカラー。
 江利子も見ていたのかな、なんて思いながら、私は頭を悩ませた。
 そうだ、今日の運勢を思い出せば、何かわかるかも。
 そう思って、記憶を探る。
 ええと、確か――――…。

 ふと、私は顔を上げた。
 …まさか。
 まさか、とも思うけど、でもこれ以外に考えられない。
 私は呆然としながらも、急いで受話器を手に取った。
 コール音を聞きながら、けれど頭の中は、今朝見た占いがめぐっていた。

総合運一位のあなたは、恋愛運がとくに良好。
 大好きだったあの人から、告白されるかも。
 ラッキーカラーは黄色。ラッキーアイテムは薔薇。

 大当たり、と思ったところで、江利子のやけに楽しそうな声が、受話器から零れてきた。



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up data 04/7/25