されどぼくはきみを愛す かたん、と音がした。 わたしは窓のほうを向いて座っているので、顔は見えない。 でも、誰だかはわかっていた。 「」 ほらね、やっぱり。 わたしは黙ったまま応えない。 聖が困ったようにわたしを呼ぶ。 「」 こっち向いて。 夕陽の匂いがする。 教室は静けさに包まれて、わたしはただじっと近づいてくる足音を聴いていた。 聖がわたしの後ろで立ち止まる。 「」 窓に映った目と、わたしの目が合う。 「こっち、向いて」 「やだ」 聖は黙り込んで、そこに佇んだ。 わたしは俯き、目を閉じる。 時計の針が1周したところで、聖が動いた。 腕がわたしの首に回され、背中に重みがかかる。 「重い」 「うん、ごめん」 だけど背中は軽くならない。 わたしは口を閉じた。聖もなにも言わない。 背中は重かった。 でも、暖かかった。 そのぬくもりに、わたしはなぜだかひどく泣けてきて、必死で涙を飲み込んだ。 「そんなことされても、わたし好きにならないよ」 「うん、いいよ」 |