されどぼくはきみを愛す



 かたん、と音がした。
 わたしは窓のほうを向いて座っているので、顔は見えない。
 でも、誰だかはわかっていた。

 ほらね、やっぱり。
 わたしは黙ったまま応えない。
 聖が困ったようにわたしを呼ぶ。

 こっち向いて。

 夕陽の匂いがする。
 教室は静けさに包まれて、わたしはただじっと近づいてくる足音を聴いていた。
 聖がわたしの後ろで立ち止まる。

 窓に映った目と、わたしの目が合う。
「こっち、向いて」
「やだ」
 聖は黙り込んで、そこに佇んだ。

 わたしは俯き、目を閉じる。
 時計の針が1周したところで、聖が動いた。
 腕がわたしの首に回され、背中に重みがかかる。
「重い」
「うん、ごめん」
 だけど背中は軽くならない。
 わたしは口を閉じた。聖もなにも言わない。

 背中は重かった。
 でも、暖かかった。
 そのぬくもりに、わたしはなぜだかひどく泣けてきて、必死で涙を飲み込んだ。

「そんなことされても、わたし好きにならないよ」
「うん、いいよ」



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up data 05/7/16
マリア様好きに50のお題「33:優しさ」
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