特別でないただの一日、でない一日 9「ごめん、ほんとうは」 「そう、ですか」 静さんは俯きながら、でもどこかで予感していたんだろう。微笑んでいた。 「ごめんね、静さん」 私は立ち上がりながら、謝る。 静さんは軽く首を降った。 「いいえ、謝ることなんてありませんよ」 静さんは一瞬思案するようなしぐさを見せ、私に向き直る。 「あの、さま。もしかして、ほんとうは予定でもあるんですか?」 「えぇ?」 「あるんですね?」 うっ…。 「…あります」 その答えに、静さんが満足げに笑う。 「名前、教えていただけますか?」 やっぱりそう来るか…。 静さんの、どこかからかうような顔に、私は嘆息した。 はぁ…ぜったい見透かされてるなぁ。ついでに面白がってる。 私は力なく、うなだれた。 逃げられないな、これは。 しょうがない、とすっぱり諦めて、私はその人の名前を口にした。 水野蓉子 佐藤聖 鳥居江利子 支倉令 小笠原祥子 島津由乃 福沢祐巳 藤堂志摩子 |