いとしき貴女へ 「ゴーイングマイウェイ」 「私? …がどうかした?」 「蓉子にチョコを渡しているんだもの」 「それは…友だちに頼まれたから」 「見ていてわかったけど。最初はあなたからなのかと思って」 ああ、それはそうだろうな。 友だちが友だちに本命チョコなんて、 「渡す前に振られるなんて、面白くないじゃない」 「だよね、渡す前に振られ―――って、振られ?」 え、と江利子さんに振り向いた私の眼前に、青い箱が突きつけられた。 思わず上半身を引き、それを受け取る。 「へ? え? なに。え。振られる? って?」 まるで展開に追いつけていない私にひとつ微笑んで、江利子さんは言った。 「あなたが好きよ」 ……は。 「え。や。うん。なに。えぇ!?」 な…なんですとっ? 「なな、なんでどこが!?」 「そういうところが」 「そういうってどこ!」 「だからそういうところ。あなたって鈍いわね」 やれやれふー、なんて感じでため息をつかれて、もしや私のほうが鈍いのか? とか思ってしまう。 「それはそうと、」 だから勝手に会話を進めるなっ! 文句を言おうと開きかけた口を、江利子さんに指でふさがれた。―――かと思うと、吐息さえかかってしまうほど至近距離に、彼女の顔があった。 びっくりして身を引こうとしても、江利子さんに腕をとられて身動きが取れない。 急展開にうろたえまくっている私を、江利子さんが面白がるように笑った。 「チョコ、受け取ったわよね?」 …は。 「受け取ったんなら、私の気持ちも受け取ったと思っていいわよね?」 …え? 「そういうわけで、じゃあこれからよろしくね、さん?」 「……なっ」 なんだその理屈!!?? 、16歳。 罠だかなんだか、よくわからないものに引っかかり、恋人ができました。 …いやほんと、なんだその理屈。 |